


新しい時代の代官山ライフは、緑と食がかたちづくる
東急不動産が推進する渋谷まちづくり戦略では、渋谷駅半径2.5km圏内のエリアを「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」と定め、「働く」「遊ぶ」「暮らす」が融合した持続性のある街を目指している。渋谷桜丘エリアの「Shibuya Sakura Stage(2023年11月30日竣工)」や原宿・神宮前エリアの東急プラザ原宿「ハラカド」(2024年春開業予定)などに先んじて開業した拠点が、東急東横線代官山駅を出てすぐの場所に構える「フォレストゲート代官山」だ。

記者発表会第1部のプレゼンターを務めた東急不動産の黒川氏は、フォレストゲート代官山を「新しい時代を育む代官山ライフ」のための拠点だと説明する。代官山は、東急不動産が手がけた日本初の外国人向け高級賃貸住宅(旧代官山東急アパート)が生まれた地でもあり、高品位な住まい、さらには魅力ある老舗飲食店にも恵まれた歴史ある街だ。
広域渋谷圏らしい「職・住・遊」が近接した暮らしに、環境やサステナブルと直結する「緑」と、豊かな価値を育む「食」を加えることで、フォレストゲート代官山の独自の魅力や付加価値に溢れた場所になってゆく。


木箱を積み上げたような形状やファサード、垂直方向に広がる森を彷彿とさせるMAIN棟のデザイン設計を手がけたのは、建築家の隈研吾氏だ。学生時代から遊び場として代官山に親しんでいた隈氏は、当時の静けさや緑の在り方を再現する想いで設計に取り組んだ。
東急東横線でトンネルを抜け、その先にある別世界のような代官山にたどり着く興奮も、隈氏の記憶に刻まれていたという。そうして完成したフォレストゲート代官山は、八幡通りと代官山駅に隣接して両者をつなぐ道を持ち、文字通り、街へ抜ける緑豊かな「ゲート」や「洞窟」のような配置になっている。美術館などの公共建築ではなく、住戸も含む建造物で洞窟らしさを実現できたことに、隈氏は達成感を感じたという。


フォレストゲート代官山は屋内外を問わず「緑」に溢れており、いつでも目を愉しませてくれる。グリーンデザインはSOLSOが手掛けており、MAIN棟を通り抜ける一帯では、グリーンの多様性が重視されている。高木層には在来種や代官山地域で見られる樹種を集め、低木層は園芸性や今後の環境負荷に耐えうると予想される植物から構成。広域渋谷圏に集う人の多様性に相応しい、多様な樹種で作られた代官山の新しい森の小道を歩き、美しい花や木々の香りを楽しみながら、いつもの暮らしや新しい店舗や商品と出会うことができるのだ。
また、MAIN棟の低層部にはフォレストゲート代官山のコンセプトに共鳴したテナントが入居する。Blue Bottle CoffeeやJo Malone London、ザ・ガーデン自由が丘を始め、緑・環境・サステナブルと、食を中心とした代官山ライフにふさわしい15店舗の開業が予定されている。居住者はもちろん、周辺住民にも新しいライフスタイルを提案する場所として、各店舗と連携した企画なども計画しているという。
こころ・緑・食をイメージしたライフスタイル提案住戸



一般住居は1LDKからメゾネットタイプの5LDKまで、幅広い57戸を用意。各住戸のバルコニーや、中庭テラスにも植栽が溢れ、生活の各場面で緑に触れることができるようになっている。

その中でも、フォレストゲート代官山らしい暮らしを象徴するのが、3名のコンセプターを招いて企画した「ライフスタイル提案住戸」だ。「こころ/With Totonou」「緑/With Green」「食/With Delicious」という新しい時代に必要なライフスタイルを考えてたどり着いたキーワードをもとに提案された三者三様の特別な住戸は、実際に賃貸の対象として住まうことができる。

隈研吾氏がコンセプターを務めたのは、過ごし方の豊かさを五感で感じる、心身が整う場。生活や仕事の環境がシームレスに融合した世の中において、自分自身のこころと向き合うための究極の「OFF空間」として、贅沢な時間が流れる住戸を提案した。
ベッドや部屋を丸ごと大きな一枚布が覆う空間は、家に帰ったら体全体を包まれてリラックスし、癒されて眠りに落ちたいという隈氏の想いが反映されたもの。隈氏が手がけたベッドや、木の棒と布で編まれた特別なラグなど、細部まで「整う」ための工夫が行き届いている。コロナで疲れた人間の根源的欲求が満たされるような生活を送る場所として、こころの豊かな在り方を感じさせてくれる住戸だ。


SOLSO代表の齊藤太一氏が提案するのは、自然と溶け合う暮らしや、季節の変化や緑の成長と共に自然な時間を過ごす「森のすみか」。フォレストゲート代官山に生まれた新しい森の中における静かで豊かな暮らしをイメージし、部屋の中を5つのテーマで緩やかに仕切り、優しくシームレスな空間に仕上げた。テーマが「creative」ならユニークな形の多肉植物を、「communicate」なら春夏秋冬をテーマにした植物のアートを配置するなど、生活の中での緑と多様な付き合い方をイメージさせる。
齊藤氏の想いが象徴されたライフスタイル提案住戸だが、フォレストゲート全体でのグリーンデザインにおいても、齊藤氏ならではの思考や実践が反映されている。たとえば、それは400品種を超える植物の多様性にも現れる。自由とサステナビリティを象徴する建築に寄り添う森として、エリアごとに異なる微小機構を分析して適切な植栽を実施。植物の命や成長、四季の変化といった非日常を都心にいながら感じることで、ほっこりした気持ちで過ごすことができそうだ。


食をテーマとした「All day Dining House」を提案したのは、フードエッセイストの平野紗季子氏。自分の暮らしへのこだわりと、日常生活との接点をひろげる場として、食が中心にある住戸を提案した。10人ほどで使えるダイニングテーブルが部屋の中央にあるため、ホームパーティや料理教室などのシーンが想像できる。「スーパーでディル(ハーブ)を買わなくても済む家に住みたい」という想いから、広いベランダには太陽を受け止める家庭菜園も取り入れた。
幼少期を代官山で過ごし、食への影響を大きく受けたという平野氏。都会の生活の中でも、新鮮なハーブが味わえ、大きなダイニングを囲める住戸で暮らせば、食の魅力が暮らしにいっそう溶け込んでくることが想像できる。街とつながる食の拠点として、フォレストゲート代官山が未来に開かれた場所になることにも期待を寄せていた。


東急不動産の黒川氏は「このエリアに根付く文化や歴史を後世に継ぐ前提で、更なるアップデートや環境へのこだわりもコンセプトに取り入れた。食やサステナブルへの感度の高い方やテナントも集まり、目指していた施設ができたと思う」と語り、ここから始まる新たな代官山、そして広域渋谷圏のライフスタイルへの期待を膨らませていた。
「WE ARE GREEN」を実現する、サステナブル拠点TENOHA棟


TENOHA棟は循環型社会の実現を目的とした、地域と都市をつなぐサステナブル活動拠点だ。岡山県西粟倉村の間伐材を利用した木造2階建ての建物は、サーキュラーエコノミーを実践するための拠点と位置付けられている。
代官山駅前という消費者が日常的に通える立地条件と、「職・住・遊」すべてのライフスタイルを融合したフォレストゲート代官山ならではのアクションを組み合わせることで、多様な企業や人々を巻き込む発信拠点としての運用を行なっていく。

東急不動産ホールディングスグループは2030年に向けた長期ビジョンのスローガンとして「WE ARE GREEN」を掲げている。新しいライフスタイルの創造や、脱炭素社会への貢献も踏まえた、環境に寄与する快適な街と暮らしの創造を目指すものだ。
カーボンマイナスやネットゼロエミッションの実現に向けた具体的な取り組みの一つとして、全国で再生可能エネルギー事業にも取り組んでいる。また、TENOHAは能代や男鹿、東松山といった地方都市にも存在しており、地域の資源を活用する取り組みなどの拠点として運用されている。フォレストゲート代官山におけるTENOHA棟は、そうした全国各地の拠点と広域渋谷圏を接続し、双方向の連携によって環境課題に取り組むための鍵となる。
東急不動産の小澤広倫氏は、地方でのサステナブルな活動に取り組む人たちの想いを感じ、そうした力をより生かしたいと感じていたという。フォレストゲート代官山のTENOHA棟では、広域渋谷圏という都心の立地を活かしつつ、より多くの消費者や生活者を巻き込むための実践に取り組んでいく。

循環型社会を目指すための象徴的な取り組みが、食品廃棄物のダブルリサイクルループだ。食の事業において大きな社会課題となっているリサイクル率の低さを解消するため、バイオエネルギーを手がける企業とも連携し、新しい活用の道を探っていく。発酵から生まれた電力を使うことでCO2を削減するエネルギー面と、バイオ発酵の結果生まれた肥料を活用した農作物をパティシエと連携した商品開発に活かすという側面の、異なるアプローチの共存が特徴的だ。

TENOHAの企画・運営を担うのは、SOLSOのグループ会社であるRGB。WE ARE GREENというスローガンに共感した八島智史氏は、TENOHA棟を拠点に代官山のサーキュラーコミュニティ「CIRTY(サーティー)」を先導し、それを渋谷を始めとした周辺の街にも伝播させようと意気込む。
CIRTYは2030年を見据え、サーキュラーやサステナブルについて考え、日常生活に落とし込んでいくためのプロジェクトの総称だ。年に一度のイベントのような特別なものではなく、日々の買い物や食事といった営みの中で、誰もが今すぐ始められることからコミュニティを育て、価値観やライフスタイルを波及させようとしている。

具体的な活動としてまず挙げられたのは、TENOHA棟で運営される循環型のオールデイカフェ「CIRTY CAFE」。「サーキュラー/ローカル/フレッシュ」をコンセプトにし、ダブルリサイクルループから⽣まれる循環⾷材や、ロスや規格外野菜・果物を活⽤したヴィーガンメニューを提供する。


TENOHA棟の緑化を推進するため、屋上での「CIRTY FARM」や屋内での植物工場を運営し、採れたての⾷材を「店産店消」で提供することにも取り組む。施設内にはグリーンキーパーが常駐し、代官山に訪れる人とコミュニケーションを取りながら、サーキュラーコミュニティの醸成を促進させていく。
CIRTYでは、今後もマルシェや勉強会といったコミュニティイベントなどを通じ、サーキュラーやサステイナブルに触れ、生活に取り入れるための実践を続けていく。メディアとしての情報発信も行いながら、フォレストゲート代官山を中心としたコミュニティが広がっていくことを感じさせた。


TENOHA棟の設計を担当したのは、株式会社SUEP.の末光弘和氏と末光陽子氏。「循環する建築」を建築コンセプトとして、間伐材の利用とドネーション等による「森と都市の循環」や、雨水を菜園やパブリックスペースで活用する「エネルギーの循環」などの仕組みを盛り込んだ。

TENOHA棟はモジュール構造の木材と金物の接合部で構成されており、移築も可能な作りになっている。再利用も可能な建築によってゴミを出さないなど、建物というハードウェアにもサーキュラーやサステナブルという意識が通底しているのだ。
食のプロセスエコノミーを生み出すプラットフォーム
フォレストゲート代官山を特徴づける「食」。魅力的なまちづくりに欠かせない要素であり、街に訪れ、住み続けることの大きな理由となる。施設にただ飲食店を誘致するのみならず、店舗の枠組みを超えて活動を広げていくためにたどり着いたのが、新しい食のプラットフォーム事業だ。
東急不動産はビジネスパートナーとして、次世代の食文化を作ることに挑戦を続ける、食のインキュベーション企業「イートクリエイター」とともに、新会社「日本食品総合研究所」を設立した。プロセスエコノミー拠点として「ソーシャルキッチン代官山」を設立し、食を通じた課題解決や、広域渋谷圏における新しい価値提案に取り組んでいく。

企画・製造・提供を同じプラットフォーム上で行うことによって、食をテーマとしたプロセスエコノミーのサイクルを回していく。コワーキング施設やインキュベーション機能を用いて企画し、テストキッチンや少量生産が可能なODMファクトリーで製造。カフェ&バーやグローサリーでテストマーケティングを行った結果を元に、シェフオリジナルブランドの展開などへとつなげていく……といった循環を見込んでいるのだ。
店舗出店に限らない支援を行う枠組みを設けたことによって、Eコマースやポップアップ出店などでシェフの活動をサポートしたり、企業の新規事業・地域のブランディングなどにも、食の観点から広範な支援も可能となっている。

具体的な施設も見ていこう。「研究所」はシェフを中心に新サービスや商品を企画・開発する場所で、500個程度の小ロットから多品種製造を目指すODMファクトリーとして機能する。最新の調理器具やパッケージング装置を備えたことで、惣菜・飲料・密閉製品など、店で販売できるものは大抵つくることができる。これまで製品化での課題となっていたロットの問題を解決し、より新たなチャレンジに取り組みやすくする施設だ。


「調理室」は食を軸とした多様な活動を展開するテストキッチン。フォレストゲート代官山の居住者をはじめ、個人や企業が様々な方法で利用できる。IHコンロやコンベクションオーブンといった調理機器や、大人数で囲めるテーブルを備えているため、シェフやそのファンが食を通じた交流を楽しむ場にもなるだろう。


「食品庫」はODM商品やメーカー推薦品などが並び、来場者が購入できる場所。チーズやワインなども充実し、各種イベントや試食・試飲、角打ちなどの開催も予定されている。半円形の大きなカウンターや、2000本まで収納できるワイン庫は見ているだけでも楽しめる。

最後に紹介する「喫茶室」は、日中はカフェ利用、夜はワインバーとして営業する飲食店。「研究所」で開発した商品のテストマーケティングの場としても利用できるほか、ブランドのタイアップイベント企画、開催も予定されている。食を愛する人を繋ぐカフェ&バーとして、フォレストゲート代官山の内外を橋渡しするような役目を果たすだろう。


イベントの途中には、施設にOPEN予定のスイーツブランド「PAYSAGE(ペイサージュ)」の江藤英樹シェフによる「フィナンシェ カカオゴールデンベリー」が振舞われた。フォレストゲート代官山らしく、地球を守る環境にやさしい素材や、食材廃棄を防ぐ工夫も凝らされた、おいしいサステナブルスイーツの事例として想像が膨らむものだった。今後も、春夏秋冬に応じた素材を活用しながら、広域渋谷圏へのアウトプットを目指していくという。
フォレストゲート代官山の充実した施設群は、ハードとソフトが一体となり、この場所から新しいスタイルが生み出されていくことを想像させる。街で事業を創造し、世界中から共感されるような発信を行い、それに共感した人や企業が集積し、パートナーシップやアライアンスが構築されていく。そんな動きが積み重なることで、これからの新しいライフスタイルが形を帯びていくことを予感させるものだった。
フォレストゲート代官山 Official HP
https://forestgate-daikanyama.jp/
フォレストゲート代官山 レジデンス HP
https://www.forestgate-daikanyama.jp/residence/