JR渋谷駅新南口に隣接する渋谷サクラステージは、多様な人が行き交う大型複合施設。約1万人が入居するオフィスエリアを中心に、渋谷・桜丘町で培われた文化を引き継ぐ多様なテナントが軒を連ね、にぎわいを生む広場やイベントスペースなどで多くの交流を生み出してきた。2024年7月25日のまちびらき記念日以来、月間約300万人(2025年5月実績)、累計では3,000万人もの人々が来館している。
「渋谷納涼大感謝祭」は、そんな一年間の感謝を届けるために企画されたイベントだ。オフィスやテナントで働く人、地域で暮らす人、この場所を訪れてくれたすべての人とのつながりに感謝を込めて。そして、今後もこの場が開かれていくことを願い、渋谷サクラステージを大きな一つの「街」に見立てて開催された、バラエティ豊かなイベントの様子を振り返ろう。
夏らしさに満ちた特別な装飾
渋谷サクラステージは、桜丘町の文化を色濃く受け継いだ施設だ。バラエティ豊かな店舗が立ち並ぶ一方で、地域住民が日常的に利用できる公共空間としての性質もあわせ持つ。その姿は、一つの「大きな街」と呼ぶにふさわしいスケール感だ。イベント期間中は屋内外の随所に夏らしい装飾が施され、ふだんの渋谷サクラステージとはひと味違う、ワクワクするような雰囲気に溢れていた。


イベント限定のロゴや、夏らしさと現代的なデザインが融合したビジュアルが、館内やデジタルサイネージを美しく彩る。また、さまざまな場所にイベント期間限定の提灯が飾られ、感謝祭ならではの特別な高揚感と一体感をつくり出していたのも印象的だ。

なかでも目を引いたのが、渋谷サクラステージを象徴するピンク色の提灯を模したカード。まるで七夕の短冊のように、一周年を祝うさまざまなメッセージが書き込まれている。この場所や近隣で働く人、暮らす人、訪れる人たちが、それぞれ思いを込めて書き込んだカードは、なんと1万枚近くに及ぶという。ひとつひとつの提灯に込められた想いが、この一年間で生まれた多様なつながりを鮮やかに可視化し、個人と街の繋がりを感じさせる。その様子に足を止め、じっくりと眺める人の姿も多く見られた。
屋台文化も現代的にアップデート
夏祭りには、屋台のご飯や縁日がつきものだ。渋谷サクラステージという「街」では、こうした伝統的な夏祭り文化にも現代的なアレンジが加えられていた。屋外だけではなく冷房の効いた屋内空間も活用し、老若男女が安心して回遊できる——そんな渋谷らしい新しい夏祭りのスタイルは、これからのスタンダードになっていくのかもしれない。

イベント期間中、サクラステージの各テナントでは「ありがとうキャンペーン」として割引やくじ引きなど、日ごろの感謝を伝えるサービスが用意されていた。さらに一部の店舗では「みんなの縁日」と題し、地域のにぎわいや来場者同士の交流を生み出す縁日企画も実施された。普段とは異なる楽しみ方ができるとあって、子どもから大人まで幅広い層で賑わいを見せていた。
都市と地域をつなぐカルチャースポット「チートトウキョウ」では、地域応援や生産者支援をテーマにした縁日企画「CHEEAT射的」を開催。長野県上松町の若手木工職人による射的台は、木曽ひのきがふんだんに使われた特別仕様だ。昔ながらの射的遊びに、現代的な景品や木工の技術が組み合わさった空間は、大人も子どもも思わず夢中になるほど。木曽ひのきの香りが心地よく漂う射的台は、フォトスポットとしても人気を集め、夏の思い出作りにもひと役買っていた。

渋谷サクラステージの魅力は、桜丘町のカルチャーを受け継ぐ食文化にもある。個性豊かな飲食店がそれぞれ企画した「すごい屋台飯」は、普段のメニューや容器を夏祭り仕様にアレンジしたもの。からあげや串カツなどの定番メニューにもワンポイントの工夫が光り、テイクアウトすればお祭り気分も高まっていく。期間中は食べ歩きに便利なスタンドデスクも設置され、開放的な雰囲気のなか、屋台グルメを味わいながら夏祭りを満喫できる。渋谷の真ん中で、スペシャルメニューと堪能する時間は夏のひとときは、非日常な愉しさを感じられるものだった。
街とつながる盆踊り&カラオケ大会

「渋谷納涼大感謝祭」のなかでも、地域や町内会の夏祭りでおなじみの「NODO-JIMAN(のど自慢)」と「BON-ODORI(盆踊り)」は、世代や立場を超えて盛り上がる象徴的なプログラムとなった。高層ビルが立ち並ぶ渋谷の中心で、昔ながらの夏の風景が広がる光景はどこか新鮮だが、暑い夏をともに楽しむ心意気は昔から変わらない。地域の人々はもちろん、企業で働く人や偶然通りかかった観光客まで、さまざまな人が「にぎわいステージ」に集い、それぞれの夏を思い思いに楽しんでいた。


「NODO-JIMAN」は、渋谷サクラステージに入居する企業・団体や近隣の人たちが交流を深めるカラオケ大会だ。東急不動産ホールディングスグループの社員や施設内テナントで働く人、音楽学校の学生など、立場を超えた参加者が美声を響かせる。応援に駆けつけた同僚や友人が、手作りのうちわで盛り上げる姿も賑やかだ。普段は顔を合わせることのない人同士が歌を通じてつながり、「みんなで楽しむ」空気が自然と生まれたのは、この場所ならではの魅力といえるだろう。


太陽が傾き始めると、誰もが気軽に参加できる「BON-ODORI」がスタート。浴衣姿の地元の方々をはじめ、ふらっと立ち寄った来場者や海外からの観光客まで、多彩な顔ぶれが輪をつくり、思い思いに踊りを楽しんでいた。伝統的な盆踊りのリズムに加え、この日のためにDJがリミックスした現代的なサウンドも響き渡り、世代も国籍も超え、音楽と踊りでつながる時間が流れていた。
このほかにも、渋谷の妖怪をテーマにしたライブペインティング「妖怪即興壁画」や、怪談師を招いて霊感体験を届ける「冷感ナイト」など、内側から涼しさを感じるイベントも多数開催。多くの人の心を動かす、渋谷サクラステージらしい、バラエティ豊かな催しが夏のひとときを彩っていた。
立場を超えた、町内会のような身近さで

「1年間のありがとうを、ここから。」を掲げて開催された「渋谷納涼大感謝祭」。揃いの法被やTシャツをまとった運営チームを中心に、誰もがこの空間を楽しめる、居心地の良い雰囲気が会場全体に広がっていた。運営者、テナント、地域住民、そして一般の来場者まで、立場も世代も超えて楽しむ雰囲気は、まるで昔ながらの町内会のような近しさや温かさを感じられるものだった。


懐かしくも新しい、渋谷サクラステージならではの光景が生まれていた「渋谷納涼大感謝祭」。企画に携わり、自身も「NODO-JIMAN」に参加し熱唱を見せた東急不動産の島健二 氏に話を聞いた。
──「渋谷納涼大感謝祭」は、どのようなアクションを期待して開催されたイベントですか?
島 : お客様はもちろん、渋谷サクラステージに入居するオフィスや商業テナント、そして桜丘をはじめとした地域の皆さまへの感謝をお伝えするとともに、渋谷サクラステージへの愛着を深めていただく機会にしたいと考え、企画しました。
── 実際に開催してみて、渋谷の街や人々にどのような影響を与えられたと感じますか?
島 : ファイナルファンタジーやポケモンといったコンテンツとのコラボレーションも実施したことで、間口が広がり沢山の方に来ていただけたので、渋谷のまちの価値向上につなげられたと感じています。また、のど自慢・盆踊り・怪談イベント、飲食テナントとの連携による「すごい屋台めし」企画などを通じて、渋谷サクラステージをより身近に感じていただく機会を創出できました。「また行ってみよう」と思っていただけるきっかけになったと思います。
── イベントを開催して嬉しかったこと、印象に残った瞬間は?
島 : X(旧Twitter)などでも多く取り上げられ、「初めてサクラステージに行ったが、おしゃれで驚いた!」といった投稿を見かけたことが嬉しかったです。また、地域の商店会・共栄会や町会と連携して出店いただいたほか、共栄会のご紹介で渋谷区婦人団体連絡協議会とつながり、浴衣姿で盆踊りの手本を務めていただくなど、お祭りを通じてまちとのつながりが深まったことも印象的でした。さらに、「今回はのど自慢大会に出場できなかったので、冬にも開催してほしい」というオフィスワーカーからの声を聞いたときは、思わずガッツポーズが出ました。
── 今後のアクションや求めているコラボレーターはいますか?
島 : 阿波踊りイベント、秋祭り、クリスマスイルミネーション、春のさくらまつりなどを通じて、地域との連携をさらに深め、渋谷のまちにより必要とされる施設を目指してにぎわいを創出していきたいと考えています。求めるコラボレーターは、コンテンツを通じて渋谷を盛り上げたい企業や、渋谷、とくに桜丘エリアを盛り上げたい企業・団体・個人の方です。コストやスペース、時間などさまざまな制約がある中でも、同じ方向を向き、熱いパッションを持って一緒に取り組んでいただける方と、渋谷を盛り上げていきたいと思っています。

渋谷サクラステージが歩んだ一年への感謝を伝え、関わるすべての人が一丸となって盛り上げた「渋谷納涼大感謝祭」。街とのつながりや人々の思いが詰まったイベントは、また新しい一年や、そしてこの先の明るい未来を想像させるものだった。夏に生まれたやさしい熱気が、これからの渋谷サクラステージと渋谷の街に、きっと新たな物語を生み出していくだろう。