近未来の渋谷・原宿をフォートナイトに再現
今回のプロジェクトは、東急不動産とBS12 トゥエルビ(無料BS放送)を運営するワールド・ハイビジョン・チャンネル株式会社が取り組む「デジタルツイン」施策の一環として行われた。デジタルツイン(DigitalTwin)とは、現実世界から収集した物体・環境などのデータを仮想空間上に構築し、あたかも“双子”のように再現する技術。東急不動産とBS12 トゥエルビは、デジタルツインの取り組みの一つとして、デジタル世界の広告と現実世界の広告を連動させる取り組みを発表した。これからは既存のOOHやデジタル広告といったメディア媒体にとどまらない、新たな広告価値の創出を目指していくという。
渋谷や原宿には多様な人が集い、カルチャーの発信地として栄えてきた歴史がある。時代とともに変わりゆく街の様相や普段目にする広告や風景を、デジタル空間にも構築すれば見え方や感じ方は全く違ってくるだろう。

現実世界でも、さまざまな流行や文化を生み出してきた渋谷と原宿。それらをデジタルツインに見立てた場合、一体どのような体験価値を見出すことができるのか。
「近未来」をテーマに、フォートナイト内に再現された4物件は、現実にある商業施設のディテールや面影を残しつつ、ゲームクリエイターが思い描く「創造」も反映されている。そうした「現在」と「未来」が調和し、“近未来都市”の世界観を体現した空間が広がっているのだ。その空間内に広告スペースを設け、リアルとデジタルを連動させた展開を視野に入れているのが本プロジェクトのデジタルツインを活用した広告である。
現実世界における屋外広告では、一定の基準が法律によって定められており、その枠組みの中で広告クリエイティブを制作する必要性があった。それがデジタル空間であれば、リアルでは実現できなかった場所への広告表示が可能になるわけだ。


既存のOOHメディア以外に、企業がデジタル空間で訴求を行うことで、新たなブランドファンの獲得や認知度の向上が期待できる。
今回のプロジェクトで連携したワールド・ハイビジョン・チャンネル株式会社は、主軸のBSデジタル放送事業のほかに、プロeスポーツチーム「原宿 STREET GAMERS」を2021年1月に発足。初めは「PUBG MOBILE」のプロリーグに参戦を表明し、その後も「荒野行動」や「ぷよぷよeスポーツ」、「フォートナイト」など、様々なeスポーツ分野へ活動の場を広げてきた。直近では、eスポーツ事業に加えてメタバース領域にも拡張させており、同チームに所属するゲームクリエイターの茶太郎さん(18歳)とAMATSUさん(24歳)が、近未来の渋谷・原宿マップを手がけた。
去る2023年10月21日には、フォートナイト内の近未来の渋谷・原宿マップを舞台にした「原宿eSCRAMBLE CUP」を開催。逃走者チームとハンターチームに分かれてプレイする「リアル鬼ごっこ」形式のゲーム配信イベントが行われた。プレイヤーたちはデジタル空間に再現された渋谷と原宿を縦横無尽に駆け回り、現実と異なる近未来の街で熱戦が繰り広げられたのだ。
茶太郎さんとAMATSUさんが考える近未来の渋谷・原宿とゲームの親和性とは何か。実際のステージづくりの裏側と、「ゲーム×広告×クリエイティブ」の拡張の可能性について両者に話を聞いた。

選んだのは個人クリエイターではなく“チーム”
─ まずはお二人のゲームとの出会いやフォートナイトでゲームを作るようになったきっかけを教えてください。
茶太郎 : 僕は神奈川県の藤沢生まれで、年齢は18歳になります。2歳の頃からゾンビゲームをやっていたというのを何となく覚えていて。昔から家族のみんながゲーム好きだったこともあって、自然とゲームに触れる環境がありました。
クリエイティブに目覚めたきっかけは、小学校の頃に初めて「ゲームをつくるゲーム」をプレイしたこと。それをやってみて、「自分の考えた理想のゲームが、いつか自分でつくれるかもしれない」と感じました。自分がゲームをプレイしてきたなかで、もっとこうした方がいいとか、物足りないと思うところを自分自身でつくっていける。遊ぶだけでなく、次第にゲームづくりそのものにハマっていきました。
AMATSU : 私は大分県の出身で、小学校に入る前からゲームが大好きでした。男性向け・女性向け問わずにニンテンドーDSでいろんなジャンルのゲームをプレイしていて。フォートナイトは社会人になったときに弟から教えてもらいました。
実はその当時、自分でもゲームをつくってみたいと思い始めていたので、フォートナイトの「クリエイティブモード」を知ったときは驚きましたね。「これで自由に自分の好きなゲームがつくれる!」と興奮しました。そこから徐々にフォートナイトで作品を公開していくようになりました。
─ 現在は茶太郎さん、AMATSUさんともプロeスポーツチーム「原宿 STREET GAMERS」に加入しています。どのような経緯で所属が決まったんですか?

茶太郎 : 原宿 STREET GAMERSに加入する前から、AMATSUさんと同じく個人で制作したゲームをフォートナイト上で公開していました。フォートナイトはもとから「バトルロワイアルゲーム」というベースとなる基盤があり、その上に自分の考えたゲームを構築していけるため、すごく入りやすかった。
原宿 STREET GAMERSの担当者からお声がけいただいたのは、ちょうど個人のゲームクリエイターとして活動するよりも、複数人で活動するのが好きで、どこかのチームに所属したいと考えていた時期でした。チームで活動することで、まさに今回のプロジェクトのような自分一人ではできない規模のゲームづくりに挑戦できる。原宿 STREET GAMERSにはその環境が揃っていて、まさに願ってもないチャンスでしたね。
AMATSU : 私もどこかのチームに所属してみたいとちょうど考えていたタイミングで。フォートナイトのゲームクリエイター同士が交流する場で親しくなった茶太郎さんから、「原宿 STREET GAMERSに入らない?」とお誘いを受けたのがきっかけですね。一人で活動していたときには味わえなかった面白さや楽しさを得られるだろうと、非常にワクワクしたのを覚えています。
「ゲームならではの体験」を追求したメディアの可能性
─ 今回の取り組みでは、広域渋谷圏の4物件をフォートナイト上に再現しました。渋谷フクラスのようにすでに現存するものもあれば、東急プラザ原宿「ハラカド」のようにまだ開業してない新施設もゲームの中には実装されています。お二人にとっても初めての経験だったと思いますが、どのようなアプローチで制作を行ったのでしょうか?
AMATSU : リアルな街をゲームの世界につくるのは自分にとって全く新たなチャレンジで、新鮮で面白かったです。また、「自分の考えた近未来を織り交ぜる」というテーマがあり、自由な発想を加えながら制作できたのが、とても楽しかったですね。今回、私は空間の装飾を担当したのですが、どうしても納得いくまで細かくつくってしまうタイプなので、一旦仮置きして茶太郎さんに手伝ってもらったり、一緒にテストプレイを繰り返したり、お互い意見と作業をラリーしながらつくることができたのが良かったなと思っています。

茶太郎 : 僕もAMATSUさんと同じで、現実にあるものをフォートナイト上で再現すること自体、全くやったことがありませんでした。ゲーム性やシステムを追求してきた自分にとって、実在する建物の制作は面白そうだなと思う反面、ちょっと難しそうだと感じたのが正直な気持ちでしたね。
今までは、自分の好きなものを想像して「内から外につくっていく」ことを意識していましたが、今回は「外からパズルを敷き詰めて制作していく」という感覚を持って取り組みました。僕はAMATSUさんと真逆で、とりあえず大まかにつくり、後から仕上げていくスタンスなので、まずは自分が建物の位置や配置を決めていき、そこにAMATSUさんが装飾していくような役割分担になるように心がけました。
─ 新しいチャレンジだったからこそ、意識したことはありますか?
茶太郎 : 従来のクリエイティブ制作と異なるのは、リアルに存在する物件を再現するだけでなく、「近未来の渋谷・原宿」を想像したものをつくるということでした。
近未来は人によってさまざまな捉え方や考え方があるため、自由につくりすぎると一貫性のないものになってしまう。まずは二人の間でそのベースとなる世界観を統一しないといけないよねと、制作の前にAMATSUさんと話し合いました。

AMATSU : 二人で「近未来の渋谷・原宿」のイメージを擦り合わせ、そこから素材集めをしていきました。私は物件の造形を担当したんですが、事前にいただいた物件のパースをできる限り忠実に再現するため、建物の質感とフォートナイト上の素材が似ているものを探して選んでいきました。
─ ゲームの世界と現実世界をリンクさせる取り組みにどんな魅力や可能性を感じましたか?
茶太郎 : リアルとデジタルを連動させた作品だったので、イベントに参加したプレイヤーからは「ここ実際に行ったことある!」という反応があったのが、とても面白いなと感じましたね。個人的には、「ゲームでしかできない体験」を突き詰めると、もっと可能性が広がっていくのではと思っています。
例えば、現実世界では絶対に許されない場所で踊ったり暴れたり(笑)。現実世界ではできない、やってはいけないことをゲームで体験することで、そこでしか得られない爽快感や高揚感を味わえる。
今回は近未来でしたが、世紀末のような荒廃した渋谷があっても面白そうですよね。自分の思い描く、自由な世界観を構築できるのがゲームの醍醐味の一つなので、その辺りをクリエイターとしてもっと追求していきたいです。
AMATSU : 今回は東急不動産さんの広告をデジタルツインの中につくりましたが、作品の展示やギャラリーとしても活用できそうですよね。Unreal Editor for Fortnite(UEFN)の機能を使えば、自分のイラストをフォートナイト上に取り込めるので、自分の作品をデジタル空間に飾ることができます。行きたくても物理的に行けない美術館があっても、フォートナイトでは観に行ける。これもゲームならではの魅力じゃないでしょうか。

ゲームの世界線を超えたコラボレーション
─ 今回のフォートナイトの取り組みは、どんな人に知ってほしいですか?
茶太郎 : 何かをつくりたいという意欲があっても、ハードルが高いという先入観から躊躇している人ほど、ぜひプレイしてほしいですね。自分も最初は本当にゲームなんてつくれるとは思ってなかったのに、フォートナイトは意外と簡単にできたのを覚えています。ぜひ、まずはゲームの世界を体感することから始めてみると楽しさに気づくと思いますよ。
AMATSU : 「え、フォートナイトってこんなことできるの?」と驚いてもらえると、ゲームクリエイターとしては嬉しいですね。
─ 最後に、これからチャレンジしてみたい領域や、コラボしてみたいジャンルはありますか?
茶太郎 : 映画やドラマが好きなので、将来的には映像作品の脚本家やプロデューサーの方と仕事してみたいです。友だち同士で同時接続して、オンラインで映画を観ることが今の若い世代では流行っていて。そういったカルチャーをゲーム内でも味わえるようなクリエイティブがつくれたら、もっといろんな可能性が広がると思っています。
AMATSU : 私も茶太郎と一緒になっちゃいますが、映像作品とゲームでコラボできたらいいなと考えています。映像は多様な演出や表現ができるし、何より距離や時間の制限を超えて魅力を伝えられる。業界の垣根を越えて、新たな価値を生み出していけるクリエイターに成長していきたいですね。

※ワールド・ハイビジョン・チャンネル株式会社の主催によるゲーム内イベント「原宿eSCRAMBLE Cup」で制作された渋谷・原宿の舞台はマップコードを一般公開中。
【近未来の渋谷マップコード】3572-9186-4209
【近未来の原宿マップコード】7902-8285-7817
※これは独立して制作されたフォートナイト クリエイティブのコンテンツであり、Epic Gamesによりスポンサー、支援、または運営されるものではありません。
原宿 STREET GAMERS HP
https://harajuku-sg.com/