PROJECT LIFE LAND SHIBUYA
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“時代をつくる街”に誕生─
FUSOUが渋谷で提案する
新時代のガストロノミー

FUSOU シェフ|内田 悟

2024.04.23

  • #桜丘
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2024年3月に、「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」SHIBUYAタワー38階に開業した起業支援施設「manoma(マノマ)」。その一角を担うシェフズカウンター型のレストラン「FUSOU(フソウ)」が目指す、新たな食文化との“出会い”や記憶に残る“体験”とは? 同店のシェフを務める新進気鋭の料理人・内田悟さんに話を聞いた。

渋谷の食と文化が交わる新たな拠点「manoma(マノマ)」

株式会社イートクリエーターと東急不動産株式会社がタッグを組み、2023年10月に代官山を拠点として始動した「日本食品総合研究所」

広域渋谷圏から新しい食文化の創造に挑戦することを目的とする日本食品総合研究所は、2024年3月、「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」SHIBUYAタワー38階に新施設「manoma(マノマ)カンファレンスホール&レストラン」(以下、manoma)をオープンした。manomaは、イベントや飲食を通して広域渋谷圏を舞台にクリエイティブ産業に関わる企業や人が交わり、スタートアップの交流促進の場となることを目指した「起業支援施設」だ。

manomaは、イベント開催の機能として180インチスクリーンや独自のサウンドシステムを有し、併設するグリルダイニング・ミュージックバーと連携することで、イベントやパーティ、展示会など幅広いシーンに対応する。

中でも飲食を通じた多様なコミュニケーションを誘う一角が、グリルダイニング&ミュージックバーの「STEREO」。モダンで洗練された空間の中でさまざまなカルチャーが交錯し、高層階ならではの高揚感が味わえるオールデイダイニングとなっている。

渋谷の街を見渡せるパノラマ眺望と空間がシンクロする「STEREO」は東京の“今”の空気感を取り入れた料理を堪能できる約120席のクリエイティブなスペース。フレンドリーなサービスを通じて、友人との食事からパーティ、スタートアップの交流促進まで、渋谷ならではの魅力あるシーンを演出する。(写真提供:manoma)

対して、プライベートな空間で上質な時間と料理を堪能できるのが、渋谷における“新時代ガストロノミー”をうたうレストラン、「FUSOU」だ。渋谷の地上の喧騒から抜け出すように38F直通エレベーターで上昇し、扉を開けると現れる静謐な隠れ家のような空間。オープンで臨場感のあるキッチン、モミの木の一枚板を使った8席のカウンターと個室を備えた、シェフズテーブルのレストランだ。

腕を振るうのは、日本食品総合研究所 所属の内田 悟氏。⻁ノ⾨ヒルズの8席限定のアニバーサリーレストラン「unis」のスーシェフをはじめ、リストランテASOや中勢以、BEES Bar by NARISAWAといった都内の有名料理店を渡り歩き、技を磨いてきた実力派の若手シェフである。

「FUSOU」シェフ・内田 悟氏。

さまざまな学びや気づきを得ながら、着実にキャリアを重ねてきた内田氏にとって、次なるチャレンジが自店の立ち上げであり、「FUSOUを起点に“渋谷ガストロノミー”を発信していきたい」と期待に胸を膨らませる。

多様な人が行き交い、トレンドやカルチャーの最先端を行く渋谷という街だからこそ実現したい食体験、FUSOUにかける想いについて語ってもらった。

次世代のシェフに求められるのは「ホスピタリティ」

 ─ まず、シェフとしての内田さんのバックグラウンドとキャリアについてお聞かせいただけますか?

内田 : 栃木県の調理専⾨学校に通っていたのですが、当時、軽井沢のレストランで住み込みバイトをしていた時にフランス料理の面白さに気づきました。歴史のある体系化されたテクニックを使いながらも、その店ならではのオリジナリティを織り交ぜて突き詰めていく姿勢に感動したんですよね。

学校を卒業した後、料理人としてどの店で働きたいか考えた時に、フランス料理の名門である東京・広尾の「レストランひらまつ」に行きたいと考えました。栃木にひらまつの求人は当然ないので、自分で問い合わせをして何とか面接を受けさせてもらい、ご縁をいただき無事入社することができました。

ひらまつへ入社してからは、系列である代官山のリストランテASOに配属され、料理人のキャリアをスタートさせました。

 ─ 実際にプロのフレンチの現場でどのような発見がありましたか?

内田 : フレンチの基礎を学んだのはもちろん、料理の表現の幅を広げていく「楽しさ」や「奥深さ」に触れる経験をしました。例えば、お客様の目の前でサイフォンを使ったスープの抽出を行う演出は、今でこそ多くのレストランで見られる光景ですが、当時はまだどこのお店もやっていない斬新な取り組みでした。

また、ASOのスペシャリテの一つである「オマール海老のマリネ」。これは、グラスを横にして食材をお皿に盛る“オブジェ”のような見た目をしており、お客様から大変好評を博していました。このように、料理は味だけに留まらない「驚き」と「感動」を与えられることを、ASOで学びました。

 ─ 視覚をはじめとした、五感を刺激するような食体験の表現に触れてきたんですね。

内田 : また、熟成肉専門店の東京小石川・中勢以内店では、牛肉の調理法や素材を活かす技術はもとより、生産者とのつながりを大切にすることの重要性を知りました。

一般的に食材は市場から仕入れますが、当時の中勢以は週末にわざわざマルシェを開き、生産者との交流の場を設けてコミュニケーションを大切にしていました。作り手の想いや愛情がこもった食材にテロワール(その土地の特性)を見出し、素材のポテンシャルを引き立てる料理を目指す姿勢は、とても影響を受けましたね。

その後は、南青山のバー「BEES BAR by NARISAWA」の⽴ち上げに関わったり、モダンフレンチの「unis」でスーシェフを務めたほか、日本食品総合研究所では料理の監修やメニューの開発、ケータリングやポップアップイベントの企画など、さまざまな活動を行ってきました。

 ─ 料理人としてのキャリアを歩むと同時に、プロデューサーやクリエイターとして職能を拡張されてるようにも思えます。

内田 : 色々な経験をさせてもらって今思うのは、料理人はサービスマンであるべきということです。特に今の時代、美味しい料理をつくることは当然として、お客さん目線でいかにホスピタリティを追求するかが肝になってきます。シェフ自身がキャラクター性を持ちながら、包括的な食体験を創造していくことが、特に渋谷のような街では求められていくと思っています。

「FUSOU」の名に込めた、日本らしさと自然の循環

 ─ manoma内に開業したレストラン「FUSOU」ですが、コンセプトは何でしょう?

内田 : 古代中国の伝説で、太陽が昇る東海の国にあるといわれる神木を「扶桑(ふそう)」と呼んでいました。それが転じて、日本の異称になっていたようです。森から川、そして海へとつながっていく自然の循環が、四季折々の表情を見せ、季節ごとの旬の恵みを育んでいく。そんな島国日本ならではの風土を活かした食体験を提供したいという思いで、この名前をつけました。

FUSOUでは、生産者が心を込めて育てた食材の魅力を最大限に引き出し、季節ごとの日本の風情や美的感覚を料理に昇華させていきます。

FUSOUでは、全国各地の生産地を訪れる中で出会った選りすぐりの食材を使用。内田氏がこれまで培った経験と感覚、フレンチの技法が組み合わさることで繊細で意表をつくひと皿となる。

 ─ FUSOUでは、どのような食体験が楽しめるのでしょう?

内田 : FUSOU開業に先立ち、馬喰町のレストラン「nôl(ノル)」にてポップアップを開催した際には、日本の冬の味覚を感じられる福井と栃木の食材を用いて、特別なコース料理を提供しました。

その時に意識したのは「自然の中の循環」です。最初に山の食材から始まり、次に海の食材、メインは渡り鳥をイメージした鴨料理を提供し、最後に山へまた戻っていくというストーリー仕立てのコースを提供しました。このように、FUSOUでもひと皿ごとに連なっていくストーリーを、料理を通して表現していこうと思っています。素材がありのままに持つ色味の鮮やかさ・麗しさを、フレンチの体系的な技法をベースにしながら日本の情景とリンクさせ、お皿を通して物語を体験していただけます。

 ─ 入店までの動線を含めた、お店の空間づくりにもこだわりを感じます。

内田 : 空間でこだわったのは、自然の温もりを感じられる「居心地の良さ」と「付かず離れずの距離感」です。

カウンターのテーブルには柔らかくて手触りの良いモミの木を採用し、キッチンと席との間は圧迫感のないゆったりとした距離感をとっています。また、壁は竹のフローリング材を使用し、食器は窯元や工芸作家さんから取り寄せた焼き物を揃えるなど、空間全体に有機的な素材を使うことで、和の雰囲気と自然の循環を意識したつくりにしています。

店内は天然石や木材、廃棄竹材などをふんだんに使った自然由来の空間となっている。壁には左官技術から生まれる手づくり感のある表情が、柔らかなライティングによって浮かびあがる。(写真提供:FUSOU)

渋谷だからこそ交わる、異文化と“食”の出会い

 ─ 内田さんにとって、渋谷の街にお店を開業するのは初めての経験になります。「この街だからこそ」を意識した部分はありますか?

内田 : 渋谷には、クリエイティブ産業を中心とした多様なワーカーが働いていて、同時に音楽やファッション、アートといったカルチャーの交錯点でもある。そのような「時代をつくる」街だからこそ、新しく斬新な食体験をFUSOUでも発信したいですね。

FUSOUに来ていただくことで、日本の文化や食材の「旬」を感じてもらえるように、コースの内容も定期的に変えていく予定です。今後は日本酒やノンアルコールカクテルとのペアリングにも、注力していきたいと考えています。FUSOUならではのクリエイションを組み合わせ、季節の移ろいや情景をひと皿に込めた食体験を渋谷から提供していきたいですね。

 ─ どういう人にこそ、FUSOUを利用してほしいですか?

内田 : カウンター8名席と個室4名席というプライベートに近い空間なので、取引先や起業仲間、ビジネスパートナーはもちろんのこと、大切な友人や家族、恋人と一緒に過ごす「ハレの日」のシーンでも、FUSOUを使ってもらえると嬉しいですね。

また、渋谷はインバウンド需要も高いので、日本のお客様だけではなく、訪日外国人の方にもFUSOUに来ていただき、新しい日本の食文化を体験して欲しいです。

 ─ 今後さらに拡張するために、求めているコラボレーターはいますか?

内田 : FUSOUはプライベートレストランですが、manomaに併設する「STEREO」は、グリルダイニング&ミュージックバーとして、普段使いできるアラカルトスタイルの料理や音楽が楽しめる空間になっています。さらに、manomaは起業支援施設としてカンファレンスホールも備えているため、この場所を軸に多様な人と企業の賑わいが生まれることで、FUSOUとの「関わりしろ」を見出せるのではと感じています。

個人的には「食×ゲーム」や「食×ファッション」のような、異業種とのコラボに挑戦してみるのも面白いのではと思っています。日本、渋谷のフードシーンを共に盛り上げていけるような企業やプレイヤーと共創していけたら嬉しいですね。

「manoma カンファレンスホール&レストラン」 概要

住所:東京都渋谷区桜丘町1番1号 Shibuya Sakura Stage SHIBUYAタワー 38階
営業時間:月-土曜日 11:00-23:00・日曜日 11:00-22:00
定休日:不定休
お問い合わせ:03-6416-1815(直通)
公式HP:https://manoma-stereo.com/

Grill Dining & Music Bar「STEREO(ステレオ)」受付
https://lit.link/stereosakurastage

レストラン「FUSOU」 概要

住所:東京都渋谷区桜丘町1番1号 Shibuya Sakura Stage SHIBUYAタワー 38階「manoma」内
営業時間:18:00ドアオープン・18:30一斉スタート、土曜日のみランチ営業 12:00ドアオープン・12:30一斉スタート
定休日:日・月
支払い方法:現金・クレジットカード
お問い合わせ:TEL: 03-6427-8107 / Mail: fusou@nsk-office.com
公式Instagram:https://www.instagram.com/fusou_sakuragaoka/

FUSOU 予約受付
下記URLからオンライン予約をご利用いただけます。
https://www.tablecheck.com/ja/fusou/reserve/landing

TEXT:Daisuke Kotajima/PHOTO:Shoichi Fukumori

PERSON

内田 悟

FUSOU シェフ

1990年⽣まれ。調理専⾨学校卒業後、当時ミシュラン2つ星の代官⼭リストランテASOにて経験を積む。熟成肉の名店中勢以内店を経て、2018年よりミシュラン2つ星・Worldʼs 50 Best Restaurants常連NARISAWAにてBEES BAR by NARISAWAの⽴ち上げに関わる。2020年より⻁ノ⾨ヒルズの8席限定のアニバーサリーレストラン「unis」の開業時スーシェフに就任。今春、渋谷に待望の旗艦店「FUSOU」をオープン。​​

SPOT

manoma カンファレンスホール&レストラン

渋谷駅中心地区のラストピースであり「職・住・遊」を兼ね備えた大規模複合施設「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」のSHIBUYAタワー38階に開業した起業支援施設。広域渋谷圏を舞台に活躍するクリエイティブ産業に関わる企業や人、スタートアップの交流促進を目指す。渋谷の街の喧騒から38階の高層階へ移動することで得られる静寂と高揚感を表現した光に包まれた空間で人々を迎える。