にぎわいSTAGEに現れた、屋外なのに涼しい広場
まずは「GREEN COOL PARK at SHIBUYA」が開催中の渋谷サクラステージへ。屋外スペース「にぎわいSTAGE」に着いてまず感じたのは、「思ったより涼しいぞ」だった。種明かしをすると、ダイキンによる屋外用のタワー型エアコンが複数台設置されているのだ。屋外にエアコンを置く、という発想は一見すると力技だが、体感は明確に違う。しかも今回は、通常のにぎわいSTAGEよりもエリアを広げた休憩スペース「Stay Cool」として設営されていたため、日かげと風が届く範囲がしっかり確保されていた。


足元には人工芝。興味深いのは、この芝の行き先だ。イベント終了後、循環型ソリューション企業のリファインバースグループの協力で、再生ナフサの原料へリサイクルされるという。ナフサは石油化学製品のほぼすべての出発点にあたる基礎原料。つまりこの芝は「燃やして終わり」ではなく「もう一度、原料に戻る」わけだ。もちろん、イベントの電力も再生可能エネルギー100%である。

噴水エリアでは、裸足の子どもたちが地面から吹き出す水と格闘していた。白い格子状のモニュメントからはミストが降りそそぎ、水と光と影が混ざり合う。真夏の広場らしい光景だ。
個人的にも注目したのが運営スタッフが肩から羽織っていた黒い布である。表面にぽつぽつと丸い凹凸が並んだ、見慣れない質感。米国のスタートアップ企業「Ezita」による冷却素材のタオルで、なんとマイナス10度を体感できるという。真夏の屋外運営は、来場者よりも長時間その場にいるスタッフのほうが過酷だ。安全に配慮して運営するためのアイテムとして配布されたものだが、いずれ商品化が実現したら、夏フェスや工事現場でも重宝されそうだなと感じた。

氷、風鈴、ガチャガチャ、そして新感覚コーヒー。五感で涼を取る
視覚的にも「涼」が楽しめるのが「GREEN COOL PARK at SHIBUYA」のポイントだ。この日の目玉である「Feel Cool」は、クラフトレーターのTAKIJIさんによる氷彫刻のライブパフォーマンス。大きな氷の塊が、チェーンソーとノミでガシガシと削られていく様は圧巻である。氷彫刻はもともと料理人の世界で宴席の飾りとして磨かれてきた技で、街なかでライブ制作として見られる機会はそう多くない。削るたびに氷の粉が霧のように舞い、風に乗って周囲に届く。これがなかなか爽快で、飛び散った氷のかけらを浴びて大喜びしていたのが、地域の子どもたちだ。最前列に陣取り、破片が飛んでくるたびに賑やかな歓声を上げていた。

やがて氷の塊から姿を現したのは、波間から跳ね上がるイルカだった。完成するや、子どもたちが群がって手のひらを押し当てる。溶けはじめた表面を撫でては「つめたい!」と声を上げ、足元の氷のかけらを拾い集める。いわゆる鑑賞用としての氷彫刻ではなく、見て、触ることができるのは嬉しい。なお会期中には、渋谷サクラステージ内に公式ショップを構えるスクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジー』シリーズでおなじみ、チョコボの氷像も制作されたという。

周辺では、東京都の進めるHTTとのコラボブースも展開されていた。HTTとは電力を「H(へらす)」「T(つくる)」「T(ためる)」の略。ここで開かれていたのが、風鈴を通じて節電行動に目を向けてもらうワークショップだ。

風鈴の起源は「風鐸(ふうたく)」という魔除けの道具で、もとは音で厄を払うためのものだった。つまり風鈴は「暑さという厄」を払い続けて数百年の大先輩ということになる。短冊の使い方にも思わず膝を打った。ここに書くのは願いごとではなく、自分なりの節電アクション。「使わない電源をOFFにする。LEDをつかう。」「音色で涼もう」——書き込まれた短冊が風鈴とともに吊るされ、テントがガラスの音とメッセージで埋まっていく。七夕の短冊が「お願いします」なら、こちらは「やります(やらなきゃ)」の宣言なのである。

隣では「GREEN CAPSULE」、要するにガチャガチャが回っていた。中身は夏の栽培に適した植物の種や、東急不動産の環境PRキャラクターであるアナグマの「ふどうさん」の立体シールなどなど。このガチャ、本番は使い終わったあとにある。傍らには「東急不動産の環境取り組みを知っていますか?」というボードと、「前から知っていた!」「今日初めて知った!」の2つの木箱。空のカプセルをどちらかに投じると、カプセルは循環利用され、同時に来場者の認知度が可視化されていくのだ。


そして「Taste Cool」。水色のキッチンカーの側面には「コーヒーで、ひと口のバカンスを。」の一文。ネスレ日本の「ネスカフェ クーラー」が、レモンとラズベリーの2フレーバーで無料提供されていた。コーヒーなのにフルーティーという新感覚のリフレッシュドリンクで、コーヒーの余韻を残しつつも驚くほど口当たりが軽い。しかも個包装のスティックを2本もらえた。持ち帰って自宅でも涼しさを堪能できるのはありがたい。


王道の暑さ対策を、愛くるしいキャラクターとともに
渋谷サクラステージを出て、明治通りを北へ。目指すは東急プラザ表参道「オモカド」だ。歩き出して数分で後悔した。暑い。当たり前だが、屋外に涼しい広場をつくることと、屋外そのものが涼しくなることは、まったく別の話である。汗をぬぐいながらオモカドにたどり着き、思わず足が止まった。あの多面体のエントランスが、まるごと水色に染まっている。ファサードには「#STAY in the SHADE」、吹き抜けにはリラックマの顔をあしらった垂れ幕。さらに長い階段の一段一段に、『すみっコぐらし』のキャラクターと大きなメッセージが。
「買わなくていいので、日かげで涼んでいってください。」

原宿の中心に位置する商業施設を、まるごと日かげとして開放する取り組み。これが花王と東急不動産による「STAY in the SHADE」だ。サンエックスの協力のもと、リラックマ、すみっコぐらし、たれぱんだといった人気キャラクターたちがオモカドに大集合していた。
東京の都心を歩いていて、地味に困るのが「足を止める場所も、座る場所もない」ことだ。休もうと思えばカフェだが、この季節はどこも行列で、しかも決して安くはない。涼むためにお金を払う、という前提からしてハードルが高い。「買わなくていいので」の一言が刺さるのは、たぶんそこだ。ちなみにオモカドは、渋谷区公認のクールシェアスポットでもある。

6階の屋上スペース「おもはらの森」に上がると、そこには「日かげの森」が広がっていた。まず目に入るのが、大人が2人はすっぽりと収まる巨大なパラソルだ。茶色っぽい一本はリラックマの顔で、てっぺんには立体の耳まで付いている。黄色はキイロイトリ、ほかには『すみっコぐらし』やたれぱんだを模したパラソルも。木々のあいだにはガーランドが渡され、樹上のノズルからはミストが降る。白いデッキチェアの上では、ぬいぐるみたちが先に休んでいた。緑と木陰とパラソル。王道の組み合わせだが、抗えない。リラックマを膝に乗せて背もたれに身を預ける来場者を見ていると、ここに求められているのは「映え」ではなく純粋な「休息」なのだとわかる。
ここでは花王によるサンプリングも実施されていた(8月1日・2日の2日間)。配布されていたのは冷却シート『ビオレ 冷タオル』。のせる前の肌温度からマイナス3℃が1時間続くという代物で、筆者も毎年夏は野外フェスなどで愛用させてもらっている。加えて、日やけ止め『ビオレ UV アクアリッチ ライトアップエッセンス(通称:光拡散UV)』の試供品も。日やけ防止は疲労感の軽減にもつながるので、涼んだあと気持ちよく歩き続けるための備えでもある。「今まさに欲しい」ものが手渡される体験は、それだけでプロジェクトへの信頼になる。

館内では、隠れた「すみっコぐらし」を探すフォトラリー『すみっこさがし』も展開。5カ所以上を見つけて写真を撮り、6階のスタッフに見せると『ビオレ 冷タオル』を留められるオリジナルクリップがもらえた。施設内をフルに活用したコンテンツゆえに、歩き回ることで結果的にクールダウンできる⋯⋯という仕掛けが面白い。

街のあちこちに「日かげ」があるという安心感
「STAY in the SHADE」が画期的なのは、オモカドの中だけで完結していないことだ。商店街・表参道欅会を中心に、原宿・神宮前エリアの約10店舗が「STAY in the SHADE」のポスターを掲出し、日かげとして店内を開放。アパレルからスニーカーショップ、靴下専門店まで業種はさまざまだ。つまり、このポスターが貼ってある店は、買わなくても誰もが入っていいということ。

ポスターは数種類あり、スニーカーショップの窓では、デッキチェアでくつろぐリラックマとキイロイトリが「買わなくていいので、日かげで涼んでいってください。」と告げていた。ただし、その脇に小さな文字が添えてある。
「でも、欲しいものはがまんしなくてもいいよね。」
この控えめながらユーモラスな言葉にはクスッとしたし、「STAY in the SHADE」だからこそ実現できる遊びゴコロだ。「休みたいけど、何も買わずに店に入るのは気が引ける」という感覚は、多くの人が持っているはずだ。そこに先回りして「どうぞ」と言ってもらえるのは嬉しい。年間8900万人が行き交うという神宮前交差点前。そのうちのごく一部でも、行列に並ばず、お金を使わず、涼んでまた歩き出せる。それだけで街の歩きやすさ/回遊しやすさは劇的に変わる。
プロジェクト初日の7月30日には、オモカドのエントランスで打ち水が行われた。「原宿の日かげ、開放中。」とプリントされた水色のTシャツをお揃いで着た花王と東急不動産の役員らが、木桶と柄杓で石畳に水を撒く。それを見守るリラックマ。打ち水は江戸時代から今も続く暑さ対策で、水が蒸発するときに周囲の熱を奪う「気化熱」を利用した知恵だ。最先端の冷却素材とキャラクターが並んだプロジェクトの初手が、江戸の生活の知恵。しかもその絵面は、どう見ても町内会の夏の行事である。古きよき伝統と、親しみやすさ。それこそがこのプロジェクトの本質かもしれない。

今回の一連の取り組みには、気候変動対策の「緩和」と「適応」という2つの軸が置かれている。緩和は温室効果ガスを減らして気候変動そのものを抑えること、適応はすでに起きた変化に人間側が対応すること。たとえば、再エネ100%の運営や人工芝のリサイクルが「緩和」、日かげの開放や冷却グッズの配布が「適応」だ。両方やらなければ意味がないとはよく言われるが、それを1日で歩ける範囲に並べてみせたのが今回の広域渋谷圏だった。担当者からのコメントは以下のとおり。
東急不動産株式会社 都市事業ユニット 環境計画部 環境企画G
下川直起
暑い夏に少しでも涼しく・楽しく・快適に過ごしながら、環境取組を分かりやすくお伝えし、広く知っていただくことを目的に、今回初めて「GREEN COOL PARK at SHIBUYA」を開催いたしました。多くの企業様・団体様等と連携してイベントを盛り上げることができましたおかげで、当初の想定を超える多くの皆様にご来場いただき、開催者にとってうれしいサプライズとなりました。今後もこうした親しみやすい内容で環境取組をお伝えしていければと思います。
東急不動産株式会社 コーポレートコミュニケーション部 ブランド推進室
田島藍
環境課題に取り組む当社は、2024年より花王さんや地域の方々と連携し、ハラカドを拠点とした原宿エリアの暑熱対策を続けてきました。今年で3年目となる本年は、渋谷区認定のクールシェアスポット「オモカド」を拠点に、「STAY in the SHADE(日かげに留まる)」をテーマとして展開。気候変動への「適応」として、日かげや涼スポットを活かした回遊体験を提案し、暑くても安全に楽しめる取り組みを推進しています。開催期間中はSNSでも話題となり、環境対策が街の新しい楽しみ方になっていると実感しました。
東急不動産は全国301か所(2026年3月末時点)で再エネ事業を展開するなど、「環境経営」を全社方針に掲げている。数字は大きいが、日常でその実感を持つ機会はほとんどない。だが、氷のイルカに触れ、風鈴に節電アクションを書き、リラックマのパラソルの下で冷タオルを首に当てれば、「この会社は環境のことをやっているらしいぞ」という記憶は確実に残る。難しい話を、体温の変化を通して覚えてもらうこと──。それがこの夏の最適解だったのだと思う。

街に「逃げ場」があるとわかっているだけで、人は少し遠くまで歩ける。来年の夏もきっと、いや、間違いなく暑い。だからこそ、この「日かげ」が広域渋谷圏から広がり、もっと先へと増えていくことを期待したい。




