「ハラカド文化祭」のコンセプトは、「+1」のアイデアを、「+1」の驚きを、「+1」の進化を、いつもと違う「+1」を体験すること。全75店舗のショップはこの日限りの「+1」のおもてなしを提供し、ブランドやショップの垣根を超えたコラボレーション、ポップアップ、ワークショップなども充実。「ハラカド」が得意とする、全館フル稼働のプログラムはどこを切り取っても驚きの連続で、まさに「文化祭」を思わせる演出や手作り感にあふれていた。
商業施設とは思えない遊び心と下町感
LLS編集部が訪れたのは、通常営業を終えた18時以降の<夜の部>だ。「ハラカド」のInstagramに投稿されていたインビテーションを提示すれば誰でも入場可能ということで、街ごと巻き込んでお祭りをみんなで「共創」していく――というマインドは、昨年9月に開催された「カド祭り」とも通じるものがある。

お馴染みのショップが、一夜限りで違った表情を見せるのも面白い。たとえば3階の会員制クリエイティブラウンジ「BABY THE COFFEE BREW CLUB」(以下、BCBC)は、同階の角打ちスタジオ「STUDIO SUPER CHEESE」とタッグを組み、『スナック 袖CHEE』と題した交流会を実施。隣接した「ALL GOOD FLOWERS」で購入した花をスナックの“ママ”に渡すと会話のきっかけや人との“つなぎ役”として優先的に紹介が受けられる「入店ミッション」を課すなど、都心の商業施設とは思えない遊び心と下町感で来館者を魅了していた。


「BCBC」ではグラウンドフロアに位置するヘアサロン「PEEK-A-BOO」によるライブヘアアレンジブースを設置し、来場者がヘアセットを受けられる体験も好評を博した。また、モータサイクル&サーフスタイルを融合したオーストラリアのブランド「Deus Ex Machina Japan」は、5階の「紫金飯店」とコラボレーションし、出前スタイルで2階のショップにフライドチキンや餃子を直送。DJパフォーマンスと合わせて、ファッションや音楽好きの外国人観光客が多数駆けつけるほどの大盛況だった。





トークイベントが浮き彫りにした、原宿の魅力と課題
クリエイターが集い、働き、語らう場所として、「ハラカド文化祭」だけの特別なトークも同時多発的に行われた。まず、2階の雑誌図書館「COVER(カバー)」には、『AERA』のブランドプロデューサーである木村恵子さんをはじめ、門野隆さん(『MOE』統括編集長)、内田さやかさん(『COOL Begin』編集長)、阿部太一さん(編集者 / 「みよし屋」店主)、田中泰延さん(コピーライター)といった第一線で活躍するクリエイターが揃い踏み。「COVER Magazine Night」と銘打ち、MCを務めた渡辺祐さんと共に「雑誌」という文化が持つ特異なストーリーを語り尽くした。


4階では、DJ ダイノジや田中知之さん(FPM)らもDJとして出演した「クローズドパーティー」の合間にトークイベントを実施。れもんらいふ代表の千原徹也さん、昨年「ハラカド」開業時のインスパイアソング「四天王」を提供した水曜日のカンパネラの詩羽さん、トラベルカルチャー誌『TRANSIT』代表の中村貞裕さんが登壇し、原宿の魅力やトレンド、そして課題について語り合った。中村さんが言う「(原宿は)夜に人がいなくなる街」や、詩羽さんの「原宿にもライブができる場所があれば、もっと音楽が身近になるのに」という言葉には、原宿カルチャーがさらに花開くためのヒントが隠れていたように思う。


トークという文脈では、3階「J-WAVE ARRTSIDE CAST」から全館に生放送されていたラジオも印象深い。MC陣の軽妙な掛け合いはさながら文化祭の放送室のようで、神出鬼没に飛び入りするゲストや、MEGUMIさんなどの著名人からの特別コメントもハラカド1周年に花を添えてくれた。

アメリカで話題の新感覚スポーツ「ピックルボール」を体験!
「ハラカド文化祭」には、来場者が楽しめるアクティビティも充実。4階エスカレーター付近の壁一面にはびっしりと書道のロゴ(実際に「ハラカド」で働く人や、常連のお客さんらが筆をしたためたという)が掲げられており、このコンセプトはそのままポスターやインビテーションなどのビジュアルに採用された。来館者もその場で書道を体験することができ、見るたびに個性豊かな筆文字が並んでいく様は壮観だ。

何と言っても目玉だったのは、「HARAKADO1周年ハラカド文化祭 PICKLE in HARAKADO」だ。PICKLEことピックルボールは、テニス・卓球・バドミントンの要素を組み合わせたアメリカ発祥のラケットスポーツ。バドミントンコートと同じ広さのコートで板状の「パドル」と呼ばれるラケットを使用し、穴の空いたボールを打ち合うシンプルなルールながら中毒性があり、“アメリカでもっとも成長しているスポーツ”と言われるのも頷ける。


今回はなんと、「ハラカド文化祭」のために4階のパブリックスペース「ハラッパ」が期間限定で広大な体育館に変貌。『TRANSIT』が手がけるピックルボールブランド「Pacific PICKLE CLUB」による体験コートが設置され、老若男女誰でもピックルボールを楽しむことができた。また、「Pacific PICKLE CLUB」×「HARAJUKU SPORTS CLUB®(れもんらいふ)」のコラボグッズとしてジャージの上下(当日は千原さんも着用)も発売。当日の文化祭気分を盛り上げる最高のスパイスとなっていた。


つかの間の「学生気分」に浸れたこの1日。発起人である千原さんは、1年前に並木橋から「ハラカド」にオフィスを移転した際、「原宿で、一緒になんかやろう。」を合言葉に掲げていたが、それを体現してみせたイベントが「ハラカド文化祭」だったのかもしれない。個人的にも、原宿のど真ん中で文化祭をやる――というアイデアには感銘を受けた。世界で一番トガッた商業施設として、これからの「ハラカド」にも期待大だ。
